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大阪地方裁判所 平成7年(わ)1848号 判決 1997年12月19日

本店所在地

大阪市中央区松屋町五番三号

株式会社シバミネ

右代表者代表取締役

芝峰邦男

本籍

大阪府東大阪市西石切町三丁目一番

住居

同市西石切町三丁目一番二〇号

会社役員

芝峰邦男

昭和二一年一二月二二日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官見越正秋、弁護人谷口光雄各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社シバミネを罰金四五〇〇万円に、被告人芝峰邦男を懲役一年六月に処する。

被告人芝峰邦男に対し、この裁判確定の日から四年間その刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社シバミネ(以下「被告会社」という。)は、大阪市中央区松屋町五番三号に本店を置き、婦人下着製造業を営む資本金五〇〇万円の会社、被告人芝峰邦男(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役として業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て

第一  平成二年五月一日から同三年四月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が一億二九七万八〇一八円(別紙1修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が三七四六万五四〇〇円(別紙4税額計算書参照)であるのに、架空仕入を計上する行為により、その所得の一部を秘匿した上、同年七月一日、大阪市中央区谷町七丁目五番二三号所在の所轄南税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が五〇八一万一六二二円(別紙1修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が一七九〇万二八〇〇円(別紙4税額計算書参照)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により右事業年度の法人税一九五六万二六〇〇円を免れた

第二  平成三年五月一日から同四年四月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が二億四一六三万六三三八円(別紙2修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が八九二〇万三六〇〇円(別紙4税額計算書参照)であるのに、売上の一部を除外するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、同年五月二六日、前記所轄南税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が六五一〇万七二四七円(別紙2修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が二三〇〇万五二〇〇円(別紙4税額計算書参照)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により右事業年度の法人税六六一九万八四〇〇円を免れた

第三  平成四年五月一日から同五年四月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が三億二九七八万二二七一円(別紙3修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が一億二二五二万三三〇〇円(別紙4税額計算書参照)であるのに、架空債権償却特別勘定繰入を計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、同年六月二二日、前記所轄南税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が五七一〇万五三九五円(別紙3修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が二〇二六万九四〇〇円(別紙4税額計算書参照)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により右事業年度の法人税一億二二五万三九〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目)

括弧内の漢数字は証拠等関係カード検察官請求分記載の証拠番号を示す。

判示事実全部について

一  被告人(兼被告会社代表者)の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の被告人(兼被告会社代表者)の供述部分

一  被告人の検察官に対する供述調書三通(一二七、一二八、一三一)

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一〇通(一〇三、一〇九、一一一、一一五、一一六、一一八、一一九、一二二から一二四まで)

一  中西勝の検察官に対する供述調書(九七)

一  芝峰喜久男、中西勝(六通)、芦田良樹(二通)、原洋二、林勝、前田進、前田正、木村久子及び伊藤寛の大蔵事務官に対する各質問てん末書(六七から七四、七六、九一から九六まで)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一〇通(一三、一五、二一、二二、四八、五〇、五六、五七、六三、六五)

一  大蔵事務官作成の査察官調査報告書(一九)

一  大蔵事務官作成の「所轄税務署の所在地について」と題する書面(七)

一  法人登記簿謄本(一〇二)

判示第一及び第二の各事実について

一  被告人の検察官に対する供述調書(一二九)

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(一一三、一一四)

一  山口哲雄の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(七九、八〇)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二通(一二、一七)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(四)

判示第二及び第三の各事実について

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書四通(一〇九、一一〇、一一二、一二〇)

一  梅谷健藏の検察官に対する供述調書(九九)

一  梅谷健藏の大蔵事務官に対する質問てん末書(七五)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書八通(一一、五一から五四まで、五九、六二、六六)

判示第二の事実について

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(一〇七)

一  姫田隆司の大蔵事務官に対する質問てん末書(七八)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書六通(八、九、一六、二三、四七、四九)

一  大蔵事務官作成の証明書(五)

判示第三の事実について

一  被告人の検察官に対する供述調書(一三〇)

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書八通(一〇四から一〇六まで、一〇八、一一七、一二一、一二五、一二六)

一  証人山下こと趙鏞三児及び同北尾要一の当公判廷における各供述

一  第二回公判調書中の証人高橋秀樹の供述部分

一  北尾要一、天野哲教こと夫哲教及び山下庸三児こと趙鏞三児の検察官に対する各供述調書(九八、一〇〇、一〇一)

一  久保田晃、天野哲教こと夫哲教、宮本豊(三通)、高木誠也(二通)、石井末雄及び岩谷吉晴の大蔵事務官に対する各質問てん末書(七七、八一から八四まで、八七から九〇まで)

一  山下鏞三児作成の確認書(一三六)

一  大橋憲彦作成の銀行確認書二通(一三七、一三八)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一八通(一〇、一四、一八、二〇、二四から二七まで、二九から三三まで、五五、五八、六〇、六一、六四)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一三通(三四から四六まで)

一  大蔵事務官作成の証明書(六)

一  押収してある補助元帳等綴一綴(平成九年押第二六二号の1)、ノート一冊(同号の2)、スパイラルノート一冊(同号の3)及び現金出納帳一冊(同号の4)

(事実認定についての補足説明)

弁護人は、判示第三の事実について、検察官が架空債権償却特別勘定繰入であると主張する山下庸三児こと趙鏞三児(以下「山下」という。)関係の七三二八万五〇〇〇円及び天野哲教こと夫哲教(以下「天野」という。)関係の二億円は、いずれも被告会社の不良債権であって、債権総額の二分の一の金額を正当に債権償却特別勘定に繰り入れたものであると主張する。

しかしながら、前掲の関係各証拠によれば、山下及び天野のいずれも元来被告会社の業務とは無関係な人物であって、被告会社の経理担当者自身もそのような人物及び債権の存在を知らなかったこと、山下関係の手形・小切手については、割引利息が被告会社に入金されていないこと、割引のための原資として被告会社の資金を用いた場合も、被告会社から被告人に対する仮払金(社長勘定)として処理されている上、被告会社の取引銀行で割り引いた手形・小切手についても、被告人による右仮払金の返済として処理されていること、さらに、山下との一連の取引においては、被告人自身の口座で取立がなされている場合も多いことが認められ、これらの事情に照らすと、被告人が捜査段階において自白しているように、山下との取引の主体は被告会社ではなく被告人であったというほかない。これに反する山下及び被告人の当公判廷における供述は到底信用できない。また、天野関係の手形についても、同様に、被告人個人の小遣い稼ぎの目的で天野に手形を担保に金を貸し付けていたものであることが明らかである。

そうすると、その余の点について触れるまでもなく、検察官主張のとおり、山下及び天野のいずれについても架空債権償却特別勘定繰入であることは明らかであるので、弁護人の主張は採用できない。

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、以上は平成七年法律第九一号附則二条一項により同法による改正前の刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条(以下「旧刑法」という。)本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予することとする。

さらに、被告人の判示各所為はいずれも被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、判示各所為につきそれぞれ法人税法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用して、右の罰金額はいずれもその免れた法人税の額に相当する金額以下とし、以上は旧刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金四五〇〇万円に処することとする。

なお、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により被告人及び被告会社の両名に連帯して負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 的場純男)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

別紙2

修正損益計算書

<省略>

別紙3

修正損益計算書

<省略>

別紙4

税額計算書

<省略>

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